(5/26第一回憲法カフェ・レジュメ)

自民党「新憲法草案」:http://www.jimin.jp/jimin/shin_kenpou/shiryou/pdf/051122_a.pdf

自民党改憲案の問題点
立憲主義の否定・三原則の解体・戦争と統制への道〜
2007.5.26 出張憲法カフェ 


はじめに

改憲へのうごき
(1955年結成時、自民党の党是。1960年安保闘争以降棚上げ。冷戦終結後、再活性化)
2005年、自民党改憲案発表
2006年、安倍政権発足、任期中改憲実現の目標を公言。教育基本法改定、防衛庁昇格法成立。
2007年1月、安倍首相年頭会見/経団連御手洗ビジョン。5月、改憲手続法(国民投票法)成立(18日公布)、集団的自衛権論議開始、6月、教育3法改定目論み、7月、参院選、秋、国会に憲法審査会設置? 2009年までに、衆院選。2010年5月18日、改憲手続法施行。改憲審議開始? 2010年7月、参院選
2011年 (選挙で与党が勝てば)改憲発議・国民投票実施の可能性大/その後も
 自民党「新憲法草案」の批判的検討
憲法の基礎と改憲の問題
立憲主義―否定/3大原則(国民主権原理・基本的人権の尊重・平和主義)―解体/権力分立―解体


Ⅰ.立憲主義の否定
 ・立憲主義
    個人の尊厳(3原則と不可分)>国家       =国民が国家を統制
  → 国家>個人(国民の「責務」)  =国家が国民を統制
・ 現行法での改憲手続は、立憲主義に反する(自由な熟慮討議保障・過半数承認が必要)
・ 与党・政府の改憲プロセス自体が立憲主義に反する:解釈改憲 →「現実に合わせて」改憲
・ 権力分立・国家権力の抑制を変質(→ Ⅳ)
・ 改正条件の緩和も問題
憲法3原則を廃棄することは立憲主義の放棄 ↓


Ⅱ.国民主権原理の変質・解体

・ 現前文「国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。」
 → 削除(案:「国民主権と民主主義」)
・ 「人類普遍の法則」の相対化/改憲による廃止可能に?
 現前文「人類普遍の法則」/「これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」
  → 案前文「不変の価値として継承する。」
・ 「象徴天皇制」の根本原理化(案前文)=国民主権原理に矛盾

Ⅲ.平和主義原則の修正=廃棄・戦争する国家をめざす
・ 前文の変更:
  - 歴史認識戦争放棄宣言(「再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」)の削除
- 案「平和主義と国際協調主義の基本原則」(!!)=安保・国連の枠で共同軍事行動を「基本原則化」
 ・第2章章題変更 ― 戦争放棄原則の放棄
・§9第2項(戦力不保持)削除
・案§9の2により、軍隊の保持(=軍備制限撤廃)、集団的自衛権=米軍との共同作戦
・ 国内治安出動を保障(cf. 自衛隊法§78,§81)
(事前法制化のうごき:防衛庁防衛省への昇格/海外出動の本来業務化/海外派兵措置の恒久法化)
・軍事裁判所の設置(案§76−3)〜通常法を超える軍のための市民・兵士統制
 ― 第1項を空文化し、戦争する国家へ


Ⅳ.基本的人権の制限=否定

・人権優先から国家権力優先へ反転
現§13:「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
→ 案§13:「(…)権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
・内面的服従の強制・「義務」の拡大
案前文「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、」
 (案前文では人権相対化・イデオロギ−混入も:「自由主義基本的人権の尊重」)
現§12「国民は、これ[権利]を濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」
→ 案§12「国民は、これ[権利]を濫用してはならないのであって、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚しつつ、常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。」
cf. 有事法制における人権制限(国民保護法)=戦争のための国民統制/改定教育基本法
・信教の自由=政教分離の否定(案§20) → 靖国神社! 〜戦争のための精神動員
・カモフラージュのための人権新設案(案§19の2、§25の2、3)/危険性も ← なくても現§13、§25


Ⅴ.統治機構における権力分立原則・民主主義原則の解体

1)政党統制(案§64の2)
2)財政における国会に対する行政権の優位(案§86)
3)内閣制度の変質=首相の独裁的権限(案§9の2―①、§54―①、§65、§72)
4)司法権の統制(案§79、§80)
5)地方自治住民の自治を原則とする《地方自治の本旨》の否定(案§91の2「参画」、現§95削除)


Ⅵ.背景

グローバル化のなかでの米日共同戦争体制づくり(cf. 御手洗ヴィジョン、アーミテージ報告1・2)
 (+ナショナリズム(+復古主義)伸張)
→ 戦争国家体制づくり(自衛軍による戦争/権力集中)
 → 国家のための(「公益」「公の秩序」)人権の抑制=否定、内面的服従の強制
ネオリベラリズムによる社会的危機 → 規範・規律の強制による社会秩序の再構築(cf. 御手洗)


おわりに

 戦争と国家統制への道=立憲主義と3原則の廃止
憲法改定の限界を超え、違憲(前文)/政府・与党議員、憲法尊重義務違反(§99)
・ 権利・平和・民主主義擁護の責務←「侵すことのできない永久の権利」を保持する「不断の努力」
・ すべての個人への訴えと連帯を!