憲法カフェvol.14「(意外と)奥深いぞ、子ども向け「戦争・平和」映像コンテンツ」
7月26日(土)、高円寺のエンジョイ北中ホール(仮)素人の乱12号店で、憲法カフェを開催しました。気温30℃の真夏の昼に、扇風機を回しながら戦争について考えるという、Mにはたまらないイベントになりました。…というのはどうでもよくて。NHKの子ども向け番組を観て、20名の参加者で語り合いました。以下に報告します。
「どうして人は戦争をするの?」
まずは『いま考える 2006夏 どうして人は戦争をするの?』(NHK、2006年8月14日)という1時間ほどの番組をみんなで鑑賞しました。番組は、イラク戦争で重症を負ったムスタファ君(当時8歳)の紹介から始まり、戦争を体験した、あるいは戦争で家族を失った人々の証言を、「戦争を知らない世代」である大人3人と子どもが3人が追っていくという構成になっています。証言者は順に、東京大空襲で両親と祖母、二人の兄、弟を亡くした作家の海老名香葉子さん、広島の爆心地から1.5キロの自宅で被爆した元プロ野球選手の張本勲さん、イラクに落とす爆弾に9.11で亡くなった息子の名前を書かせたアメリカ人の父親、イラク帰還兵の息子に自殺をされたアメリカ人の父親、敗戦を満州で迎え、父親の友人の中国人に助けられて帰国した漫画家のちばてつやさん。
戦争のしくみについて掘り下げた番組というよりは、戦争被害に焦点を当てて、戦争の理不尽さとその克服の(不)可能性を提示するドキュメンタリでした。
正しい/正しくない戦争の先にあるものは?
休憩後は番組を受けてフリーディスカッション。いろんな意見が飛び交いました。いくつか拾ってみます。
「『希望は戦争』と赤木(智弘)さんは言うけど、こういう(戦争被害の)現実を見た後でも同じことが言えるのか?」
「広島の平和記念資料館を訪れて汗が止まらなくなってしまったという子どもの反応がとても印象的だった。番組では子どもたちの感情を大人がうまく受け止められていないと思う」
「番組ではなぜ戦争をするのかという問題に触れていなくて歯がゆかった」
「子どもは大人が求めているものを出してしまうので、子どもに語らせる方法には限界がある。結論として家族が大切だという流れになってしまうことにも違和感がある」
「戦争の解決策として平和教育を明確に示しているよい番組だったと思う。お互いを人間として認めていれば戦争なんて絶対にできない」
「そう思いたいが、イスラエルの徴兵制やアメリカの貧困徴兵制のように、戦争を推進する社会的な構造についても考えないと」
「番組では戦争のメカニズムはブラックボックスで戦争被害だけを見せている。システムのようには論じえないものを映像で見せるという意図なのでは?」
「戦争が悲惨なのは何といっても非戦闘員が犠牲になってしまうから」
「ただ、戦闘員がなぜ戦闘員になるのかは考える必要がある。アメリカがイラクに侵略する前には、イラクにも戦闘員はいなかった」
「そもそも戦闘員と非戦闘員を厳密に分けられるという発想も疑問。軍需工場で働いている人やゲリラ戦での戦闘員など、境界はあいまいなのに、『ピンポイント』で戦闘員だけを殺害できるという幻想があるのでは?」
「9.11の後、なぜアメリカがアフガニスタンとイラクを攻撃することになったのかが理解できなかった。自由を守るために先制攻撃をするというけど、相手の自由はどこにもない」
「正義の戦争などありえない。国民はプロパガンダに騙されず、国境を越えた個人と個人のつながりを持つべき」
「『人道的介入』のように『平和のための戦争』の必要性が叫ばれたときには、『心の平和』を訴えても対抗できないのでは?」
「とにかく平和運動を広げることが大切」
「でも明日の仕事もないような人たちを平和運動に動員しようとするのは暴力的。相手に選択の自由を与えるコミュニケーションがあって始めて、平和運動にも広がりが生まれると思う」
「大人は『私たち』と『かれら』を国境で隔ててしまうけど、子どもはただ子どもであることで『We』になりうる。弱者にとっての戦争を捉えるポイントではないか」
「労働者階級こそが世界を変える力を持っている。一番大切なのは諦めないことだと思う」
「戦争を友情で克服できたら理想なのだろうけど、難しいと思う」
「戦争は嫌だと思うけど、生活のことを考えると…もどかしい」
「正しい戦争はないというのがたとえ理想にすぎなくても、それを語り続けることは何らかの抑止力にはなると思う」
「日々自分が生きることでいっぱいいっぱいだが、語るべき言葉を考えていきたい」
「優等生的な人の発言にはどうしても違和感を持ってしまう」
「番組は親と子が一緒に観るものとしてはよいものだったと思う」
…というようなことを暑く語り合いました。相変わらず結論の出ない憲法カフェのディスカッションですが、これからもよろしくお願いします。
次回8月23日(土)は渋谷・宮下公園で出張憲法カフェを開きます。お祭りがてらぜひお立ち寄りください。(kanti)