12月22日(土)憲法カフェvol.7 レポート


はじめまして、Kと申します。
わたしは11月に早稲田大学で行われた「格差×戦争」のイベント(詳しくは前の記事を参照してくださいね)に参加してちょっとばかり衝撃を受け、今回初めて、喫茶店での憲法カフェ・デビューをする運びとなりました。

ところで、憲法カフェに参加するような人は、憲法関連の問題に詳しい人・熱い自論を持ってる人ばかりだろうと敬遠しちゃってる人もいるかもしれないですが、ご安心を。中学の授業で憲法読んだような気がしなくもない…そういうレベルです、わたし。そんなわけで、今回参加するにあたっては、少しばかり勇気をふりしぼりましたが(だって、いきなり意見とか求められても、超困るし!)、こぢんまりとした雰囲気で、ちゃーでも飲みながら(カフェだし)、自己紹介からゆっくり始まり、いい年こいて人見知り傾向な(笑)わたしも、あんま緊張しなくてすみました。って、そんなことはどうでもいいですか。


今回の参加者は、初めての方も数名含めて、17名。わたしのような憲法ビギナーから、この人エライ詳しいわなーというような人まで、さまざま。この日はゲストスピーカーを呼ばずに、みんなで憲法を読んでみよー!というものでした。
資料として、現行憲法自民党憲法草案(以下、草案)を並べて比較できるようになったもの(今回は、前文・9条・13条・21条・25条)が配られまして、それを誰かが声に出して読んでみる。そして、感じたことや素朴な疑問などを自由に出していき、それに対して誰かが反応し、…という感じで、途中1回休憩を入れて約3時間。先月の「格差×戦争」のイベント後だったので、9条(戦争放棄)と25条
生存権)関連の話がメインになるのかなーと、始まる前はなんとなく思っていたのですが、意外と、前文と13条(個人の尊重等)あたりで、けっこう盛り上がっていたように思います。


さてさて、前文に関しては「声に出して読んでみる」というのが、個人的にはミソだなーと感じました。音読してみると、何か違って感じるものがある。前文については一番多くの方がコメントされていたので、以下、出てきた感想・意見などを一部紹介します。
・草案は、なんか馬鹿にしてる感じ
・現行憲法は主語である「われら」が憲法を書くに至った歴史的経緯(戦争とか)が重要なものとして踏まえられているのに対して、草案はそれがすっかり抜け落ちてる。
・現行憲法は、一つの文章として流れがあるが、草案は箇条書きのような感じ。
・草案は、国民はこうせよ、と規定する匂いがする。
・草案は、「日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって…」と言うけど、そんなこと勝手に決めないでほしい。
・草案は、一つ一つのコトバは、文句を言えないような単語だから、タチが悪い。
・現行憲法の「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和 のうちに生存する権利を有することを確認する」に相当する部分が、草案では消えているが、これがあると不都合だからじゃないか
・草案は「今、政府がこうしたい」というものが出ていて(地方自治の重視とか)この憲法で何十年もやっていこう、という決意が感じられない。
・草案の「自由かつ公正で活力ある社会」って、財界用語だ。
・現行憲法も、なんか身にしみてグッとこない。


続いて、9条(戦争放棄、草案では「平和主義」)については、やはり自民草案の矛盾等がつっこまれていましたが、他には現行憲法の「戦争放棄」が、草案では「安全保障」という言葉に変化していること、そしてそこから、「安全」という言葉がこれまで為政者にとって都合よく使われてきたことなどが話題にのぼっていました(90年代から、「体感治安」などという根拠の無い用語が、政府系の文書で出てきたこと等)。
それから、草案に「国民の生命もしくは自由を守る」と書いてあるけど、これは過去に軍隊が国民を殺してきた事実(沖縄の教科書問題がタイムリーですが)を抹殺しようとしていて、国民をバカにしすぎだ、という怒りの意見もありました。他には、軍隊を持って無いことで有名なコスタリカってどうなってんの?という疑問に対する応答も。ここでは詳しく書きませんが、興味があれば、詳しく調べてみると面白いのかも・・・。


13条(個人の尊重)では、国が国民の生命、自由、幸福を追求する権利を尊重しなければならないと書かれています。現行憲法では「公共の福祉に反しない限り」これらの権利は尊重される、と言っているのに対し、草案ではこれが「公益および公の秩序に反しない限り」と変化しているところが最大の論点になっていました。現行憲法では、他人の人権を侵害しない限り、自由や幸福を追求できる(人権を制限できるのは人権だけ)、という考え方であるのに対し、草案でいう公益とか公の秩序を決めるのは、「わたしたち」ではない。
例えば「公益」が経済発展ということになったら、そのために過労死したって仕方ないということになってしまう、といった意見などが出ました。そのほか、これに関連して、自殺や同性婚はどうなの?といった色んな疑問が出てきました。


そのほか、21条(表現の自由)と25条(生存権)についても話しました。現行の13条で保障されている生命、自由、幸福を追求する権利は、この21条や25条と密接に関係していることを共有しました。



最後に…
前文のところで書きましたが、参加者の方の「草案は、なんかバカにしてる感じ」という、そのように感じるこのセンス、すごい重要だなー、と個人的には思いました。バカにされてるにも関わらず、なんだか「良さげ」な言葉の羅列にだまされて見過ごして、あとで痛い目にあうなんて、ご免こうむりたいですし。やっぱり読んでみて初めて、例えば「あ、バカにされてるんだ」などと思ったりもするわけで、「憲法よんでみる」企画の意味の一つは、少なくともそこにあると思います。
しかしまた、忙しい現代人の多くは恐らく、草案の良さげな単語の羅列すら、目にすることはないまま時は過ぎ去っていくのであって、「両方読んでみて、何かを感じ取る」に至るのって、自分の身近な人を想像してみても、なかなか難しいよなぁ、などと思ったりもするのでした。・・・いやいや、だからこその憲法カフェでしょうか。